過去の過労死事件と、その残業時間
2015年12月25日、電通の新入社員であった高橋まつりさんが自ら命を絶ちました。
当時大きくメディアで取り上げられた事件なので記憶に残っている方も多いと思います。
まつりさんは入社してから恒常的に月で100時間を超えるの残業をさせられていました。命を絶つ寸前には鬱状態であったと言われています。
第二の「電通事件」へ
電通は1991年にも過労による自殺者を出していました。彼は、月平均150時間の時間外労働を強いられていました。
その為、鬱病が原因となり、結果彼は自殺してしまいます遺族は電通に対して過労による自殺であると訴訟を起こしました。
この裁判をきっかけに、過労死で亡くなった社員の遺族が会社を訴える事象が一気に増加しました。それほどこの「電通事件」は世間に与える影響が大きい筈でした。
ところが電通はその後も違法残業を続け、結果2件目の「電通事件」に繋がる事となるのです。
進まぬ改革、変わらぬ環境
この事件は大きく取り上げられ、結果2015年の安倍内閣による「働き方改革」の推進を促す事になります。
しかし電通はこの事件の後にも、違法な残業体制を継続し、36協定で定めた労働時間を越える残業を続けていました。
その後も2019年月、36協定の違法な延長などを指摘され、労働基準法と労働安全衛生法に違反したとして労働基準監督署から是正勧告を受けました。
何故、こんな会社の中でまつりさん達は自ら命を断つ選択をしまったのでしょうか?
- 過労死とはどういう事なのでしょうか。
- 他の選択肢はなかったのでしょうか?
全ての労働者に当てはまる訳ではないですがこの記事では、過労死に至る労働時間について自分の体験も交えてお伝えしていきます。
法的な過労死認定ライン「80時間」
ここで厚生労働省が定める過労死ラインについて説明していきたいと思います。
1ヶ月で100時間を越える時間外労働、もしくは2ヶ月~6ヶ月にわたり80時間を超える時間外労働の場合を、過労死のラインと定めています。
週5日出勤と仮定すると、22日出勤(30日と仮定)で8×22=176時間+80時間=256時間。出勤日22日で割ると一日11.5時間。
1日平均3.5時間の残業を2ヶ月以上続けていると過労死のリスクが高まる、としています。
100時間だと、先ほどの計算式に当てはめて8×22=176時間+100時間=276時間。出勤日22日で割ると一日12.5時間。
1月1日平均4.5時間の残業で過労死ラインに手が届きますね。
ここでもう1つ、厚生労働省が定める過労死とは以下の症状を起こし、死に至る事を指します。
脳に関するもの
- 脳内出血
- くも膜下出血
- 脳梗塞
- 高血圧性脳病
心臓に関するもの
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心停止
- 解離性大動脈瘤
なぜ、厚生労働省がこれらの症状を過労死の原因とするのには、睡眠との医学的根拠があります。
先ほどの労働時間を逆算して、月に80時間の時間外労働をした場合、1日6時間の睡眠が確保しにくいという事。
また、月に100時間時間外労働をした場合、1日5時間の睡眠が確保しにくいという事。
1日6時間の睡眠時間を確保が出来ない生活が続くと、身体の疲労が蓄積し、それが血管病変に繋がり、やがて脳や心臓への病気を引き起こす、そういう医学的根拠に基づいたものになっています。
実際のブラック企業の残業時間、拘束時間
僕自身も振り返るとかなり過酷な労働環境で働き続けてきました。僕は18歳から42歳現在まで、殆どが飲食関連の仕事に従事しています。
1番過酷だったのは35歳の時、新店舗の立ち上げを任された時でした。オペレーションから何から1から学ばなくてはいけなかった為、出勤は朝の9時。
納品やら物の置き場やらを決めつつレシピも覚えるなんて事をしていると毎日帰りは天辺(12時)を越えていました。
それがオープンしてから3ヶ月間休みなく続きました。さすがにオペレーションが固まってきてからは9時が10時になり、帰る時間も早くなりましたが。
平均で計算すると、9時~0時で休憩1時間として(取ってませんでしたが)1日14時間、3ヶ月間休み無しでしたから、14×30=420時間。
残業時間は420-176時間=244時間。
よく死なないで働いてたな、と思います。
しかもバイク通勤だったので1つ間違えれば…。
立ち上げから暫くして、シフト上また3ヶ月間休みのない期間がありました。その頃のシフトは15時~1時でした(もちろん休憩無し)。
また計算してみると11×30=330時間残業時間は330-176時間=154時間まだまだ完全に過労死ライン超えています。
ちょうどこの頃に過労死ラインの話題がニュースで流れていた頃でした。
80時間という数字をみて、自虐的に鼻で笑ってました。80時間で死ぬのなら僕は何度もも死んでるよと。
逃げるは恥ではないし、役に立つ
結局、僕はそこを辞め、同じ業態で飲食業に従事しています。今振り返ると、いかに異常な状況だったか
労働者には辞める権利があります。労働基準法によれば、労働者は退職を告げて2週間後に退職することが出来ます。
これは社内規則がどうとかではなく、法律です。本当に心が壊れると思ったら、その権利を使って下さい。
会社には止める権利はないのです。
繰り返します。
労働者は辞められる権利を持っています。
退職届を渡した時点で、目の前で破られようが、2週間で辞める事が出来るんです。
配達証明で社長宛に送ってもいいんです。
心が壊れる前に。
生きてるだけで丸もうけ。
自分の労働環境に疑問を抱いている方への一助に、この文章が役立ってくれる事を心より祈っております。