副業に対する企業のスタンス、今後はどう変わる?

副業

日本では、企業が就業規則の参考とする「モデル就業規則」の中に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」との規定が含まれていたこともあり、長く副業が禁止されていました。

2018年1月、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成したことにより、本業の勤務時間外に副業を持つことを政府も奨励するようになりましたが、現状では副業を認めるか否かは未だ本業の企業のスタンスにより決定される形となっています。

しかし、企業は今後、副業を積極的に認めていく方向にあると考えられています。

ここでは、その理由をまとめてみました。

企業における副業の捉え方

2019年に日本経済新聞が行った東証1部企業や非上場の大手企業121社へのアンケートによると、約5割の企業が従業員に副業を認めていることがわかりました。

社員の成長やモチベーション向上、社員のセカンドキャリアの形成などが副業の意義としてあげられています。

企業側では、副業を持つ従業員が外部のノウハウを吸収し、自社の人材育成や新事業の開発につなげられることを期待しています。

企業によっては、本業に関連する副業での経験を本業に生かしたり、副業からヒントを得た事業提案したりと、具体的な効果が出ているとこともあるようです。

一方で20%強の企業では副業を認めない方針ということです。

このように企業によって副業に対する考え方は様々ですが、副業のメリットと懸念点について具体的に見てみましょう。

企業にとって副業を解禁することのメリット

企業が副業を認めることで、以下のようなメリットがあると考えられます。

副業でのスキルや知識の習得により従業員の育成に繋がる

多くの企業では、スキルアップや知識向上のためのトレーニングや研修を実施する余裕がないのが現状です。

副業を持つことで、自発的に新たなスキルを習得したり、知識を増やしたりすることができるため、企業としては手をかけずに従業員の質の向上を手に入れることができます。

従業員の自律性や自主性を促す

副業を持つことで効率的な時間の使い方をする必要が生まれます。

その結果、従業員がダラダラと残業をしたり長めのお昼休みをとったりということが減り、業務時間内にしっかりと本業の仕事を終わらせるように努力するようになります。

優秀な人材を採用できる可能性が高まる

中途採用を検討した際に、既に副業を持ち様々な経験や知識がある人材を雇用できる可能性が高まります。新しく雇用した人材が、社内に新しい風を呼び込み、既存スタッフの活性化にもつながります。

従業員の離職率が低下する

興味のあることや、好きなことを副業として持つことにより、本業への不満が緩和されるようになります。

また、本業での収入が不足していると感じていても、副業で補うことができるようになるため、本業の離職率が低下します。

企業のイメージアップに繋がる

副業を認めることで、従業員の成長をサポートし、責任感を尊重するオープンな企業であるというイメージが公に広がり、「働きやすい職場」としてのプラスのイメージを持たれるようになります。

自社の労働力不足の解消・専門家が活用しやすくなる

副業としての働き方を選択する人を採用することで、正社員として雇用しなくても不足している労働力を補えたり、専門知識をもっている人をスタッフとして契約できたりと、人件費の節約が可能になります。

企業が副業を解禁することの懸念点

企業が副業を認めない背景には、以下のような懸念点を持っているからでしょう。

本業の会社の情報漏洩

本業の内部事情やサービス詳細、価格情報はもちろん、本業で入手しているクライアント情報や個人情報などが外部に漏れてしまうリスクが常に存在します。

副業の会社の情報漏洩

副業側の企業の内部情報や価格情報、副業を通して入手した個人情報などを本業の業務に活用するようなことがあれば、コンプライアンス違反として本業側が問題に直面することが考えられます。

副業における労災の発生

副業中に事故にあったり、ケガをしたりといった労災が発生した場合、入院や通院といった理由で本業へも影響が及ぶことが心配されます。

従業員の健康面・体力面への負担

副業を持つことで1日24時間を目一杯使うようになり、週末も副業に充てるなど、身体を休める時間が不足することで、健康面や体力面で負担増となるケースが懸念されます。

自社の労働時間の順守

本来であれば本業の業務時間外に行わなければならないのが副業ですが、副業に力を入れ過ぎ本業とのバランスが崩れ、本業の業務時間内に副業の作業をしてしまうといった規則違反が発生する可能性があります。

まとめ

日本の企業では終身雇用が根付いていた上に、外国人の登用なども遅れており、人材の流動化が少ないと言われてきました。

副業を解禁することで、多様な働き方が後押しされ、イノベーションの促進につながると考えられます。

また、日本では労働人口の減少が現実問題となっており、将来的な働き手の不足が懸念されています。

副業奨励により、効率的に本業を終えた人が他の仕事に就け、人手不足を緩和する一助になると期待されています。

こうした点からも、今後はますます副業を認める企業が増えていくと思われます。

副業に否定的な企業には、副業による本業へのメリットを伝え、懸念を払しょくするように説明してみると良いでしょう。

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