社会に出て就職したら、その会社で定年まで勤め上げるというのは過去の話。
しかし、転職が当たり前の時代になったと言われる今、実際にどのくらいの人が転職を経験しているのでしょうか?
ここでは、データを見ながら転職をするメリット、しないメリットについてまとめてみました。
転職者についてデータを分析
総務省の調べによると、2019年の転職者数は351万人と過去最高だったそうです。
(総務省統計局)
2019年の就業者数は6,733万人だったので、約5.2%の人が転職者ということになります。
そう考えると、確かに多く感じますね。
男女別で見ると女性(186万人)が男性(165万人)を上回っています。
年齢別では、34歳までが20%以上を占めていますが、興味深いのは55~64歳までが4.4%と過去最高を達成したことです。
リーマンショック直後は「会社都合」による退職が多かったのですが、2019年の結果では、前職の離職理由は「より良い条件の仕事を探すため」が最も多く、全体の36%を占めました。
この結果を見るだけでも、自ら積極的に新しい職場に転職している人が多いことがわかります。
企業側についてデータを分析
少し古いデータになりますが、厚生労働省が2015年に実施した転職者実態調査によると、企業側の状況として、30.4%の事業所において転職者がいるという結果を示しています。
転職者の採用理由としては、「経験を活かし即戦力になるから」、「専門知識・能力があるから」というのが大半を占めており、今後3年間の転職者の採用予定についても、半数以上の事業所が「転職者を採用する予定がある」と回答。
この結果から、企業側も即戦力として活躍してくれる転職者を求めて中途採用を実施していることがわかりますね。
事業所規模別にみると、事業所規模が大きいほど転職者を採用する予定がある事業所の割合が高くなる傾向に。
事業所規模別に見ると、「転職者を優先して採用したい」では、おおむね、事業所規模が小さいほど事業所割合が高く、小規模の事業所では経験ある転職者への期待度が高いことが窺える結果となっています。
転職するメリット・しないメリット
転職が当たり前となったからといって、転職しなければならないわけではありません。
転職する、しない、両方にメリットがあり、同じことが企業側にも言えます。
それぞれの視点でメリットを見てみましょう。
転職するメリット
転職する一番のメリットは環境を新しくできることでしょう。
学校と違い、卒業という節目がないのが職場ですから、新しい環境を求めるのであれば、自ら転職するのが手っ取り早い方法です。
環境を新しくすることで、新しい人との出会い、新しい業務との出会い、新しいチャンレジとの出会いなどの機会を得ることができ、前職で行き詰まりを感じていた人はフレッシュな気持ちで仕事に向き合うことができるでしょう。
また、年収や残業、休暇などの労働条件も転職を機会に改善できる場合が多いため、多くの人が年収アップ、残業減などを目指して転職の機会を模索します。
企業から見た転職のメリット
ほとんどの企業のウェブサイトでは、新卒用と中途・キャリア用の採用情報が掲載されています。
つまり、企業としても転職者の採用は既定路線ということです。
新卒で採用した人材が育ち切る前に離職してしまうことが多くの企業にとって問題となっている今、中途・キャリア採用は企業にとって欠かせないものとなっているのです。
転職が当たり前になることで、転職希望者にはチャンスが広がり、企業としては経験豊富で優秀な人材を採用できる機会が増え、まさにウィンウィンの状況と言えます。
最近では、転職希望者の増加により受け皿も増え、人材の回転が良くなっていると言われています。
転職しないメリット
転職の機会が増えたからといって、転職しない選択をしても決して間違いではありません。
転職をせずに、その企業で「生え抜き」として存在感を高めていくことで、経験とともに社内での信頼も得られるようになります。
経験と信頼が増すことで、よりやりがいのある仕事を任されることになるでしょうし、降格人事のようなことがなければ、給与も着実に上がっていくでしょう。
また、部署異動や転勤などにより、転職をせずに環境を変えることができる可能性もあります。
転職が当たり前の時代になっていますが、だからといって、「現状の問題を打破するためには転職しかない」というわけではないことは頭に入れておくべきです。
企業から見た転職しないメリット
多くの企業では、最近は特に若手の定着率が低く、人材育成に苦慮していると言われています。
その中で転職せずに長く働いている社員は頼りになる貴重な存在です。
企業は必ず短期、中期、長期といったビジネスプランや目標を掲げて事業を行っており、将来のビジョン達成のためには、長く腰を落ち着けて働いている社員の協力が欠かせません。
また、大きなプロジェクトや商談には、途中で離脱しない信頼のおける社員への期待が大きくなりますし、顧客サポートなどでは、重要なクライアントのことを長く担当している社員が長期的な関係構築には非常に有効です。
こうしたことからも、転職しない社員を多く持つことは企業にとって大きなプラスとなり、定着率の高い企業として評価される結果にもつながります。
まとめ
転職が当たり前の時代になりましたが、転職が正しく、転職しないのは間違っている、というものではありません。
安易な転職はお勧めしませんが、やってみたい仕事、目指したいキャリアがあるのであれば、転職をためらう必要はないでしょう。
逆に、今の会社で長く働き、経験を積んで、大きなプロジェクトを任されるようになりたいというのもキャリア構築の選択肢です。
転職する、転職しない、どちらにもメリットがあり、どちらの決断をしても、本人が納得していればそれが正解ということでしょう。